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選評
応募用箋一、三四八枚を受け取って、久しぶりに緊張を覚えた、一枚一枚を丁寧に見る。それは現在の川柳界に直接つながる、ふれることなのである、一生活にひたり、詩心をおもい、内外を見つめ、淋しさ哀しさに自己の存在を求め、一句一句に優れた言語の定着、個々の秘められた凝視、人間をみつめるに深く未来をみつめ、地に足をつけて非凡である、いっそうの根源で深い喚起力を持ちたい。
今回「柳多留」応募作を一度に数多く読んで、境界が無くなりつつあることを知った、一面、没個性になり過去のしがらみにとらわれて居る思いが強くする。表現のストレートさと、多義性を備えればと夢想するのである、「蝸牛」「試歩」「鈍行」「砂時計」「刻」「点滴」等々類想が多く、句語の借用が意図の是非は別にして頻出するのは避けえないのであろうか、秀句に挙げ得た三句は、自作近い思いがある、川柳に対する異和感を宿して居る、自己戯画がうかがえるのである、川柳の無季性も課題であり、日本の四季とまったく無関係には破綻を迎えるにちがいないと予想するだけで、歳時記的な発想では発進出来ない、いまは個々の作者が作者自身の手によって突き放されながら造型されるときで、冗長な情念の吐露のみの、人間主義は自分自身に対しても遺物となるのではないか。」私は自らを律し、自らを制し、自らを省することに、自らの川柳があると思って精進致す所存である。妄言多謝
開発秋酔

 

 

 

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